文化省は6日、「映画で振り返る松竹の歴史」というコンセプトの特集上映会『松竹第一主義 松竹映画の100年』を国立映画アーカイブにおいて開催すると発表しました。
7月7日から9月6日まで、79本(64作品)の映像を上映するというもの。弁士・伴奏付上映、伴奏付上映も体験できる貴重な機会です。
本企画は、松竹による映画製作100周年を記念して、1921年の『路上の靈魂』から2006年の『花よりもなほ』まで、提携・配給作品も含め、さまざまなジャンル・監督・スターの松竹作品計79本(64プログラム)を上映する大規模特集です。日本映画界を代表するメジャーカンパニーのひとつとして、今も業界を牽引する松竹映画の100年間の足跡を振り返る絶好の機会となりますので、ぜひとも周知にご協力を賜りますと幸いです。
大正9(1920)年に映画製作に乗り出した松竹は、蒲田撮影所を拠点として、都会的で明朗な“蒲田調”(1936年の大船撮影所移転以降は“大船調”)を確立し、日本映画に新しい流れを起こしました。その後も国産初の本格的長篇トーキー『マダムと女房』(1931)や国産初のカラー長篇『カルメン故郷に帰る』(1951)を成功させるなど、新技術を積極的に取り入れ、喜劇やホームドラマを基調とした娯楽映画の高い質を維持するとともに、小津安二郎や木下惠介といった巨匠たちの芸術性や、“松竹ヌーヴェルヴァーグ”と称されたような革新性も打ち出しました。また京都では、下加茂(1923-52)と太秦(1940-65)の二つの撮影所を拠点に時代劇を量産したことも特筆に値します。さらには、外部のプロダクションと積極的に連携することにより、“大船調”とは異なる多様な作品を生み出したことも忘れてはならないでしょう。
プレスリリースより
※「松竹第一主義」――1932年初頭に当時の松竹蒲田撮影所長・城戸四郎が掲げたモットー
本特集のみどころ
★松竹映画100年の名作・代表作――小津安二郎や木下惠介、渋谷実、中村登、小林正樹、大島渚、吉田喜重、山田洋次ら巨匠の作品をはじめ、『愛染かつら』、『君の名は』3部作、『釣りバカ日誌』など松竹映画の名作・代表作が勢揃い。
★主流の“大船調”とは異なる個性的な作品たち――サブセクション「松竹時代劇と下加茂・太秦撮影所」では、大曾根辰夫監督作品を中心に松竹時代劇の知られざる魅力的な作品をそろえました。また、西城秀樹の全国ツアーを追ったドキュメンタリー『ブロウアップ ヒデキ BLOW UP! HIDEKI』や加藤泰監督の遺作『ざ・鬼太鼓座』といった異色作、さらに、中川信夫のレアな任?映画『男の嵐』や北野武監督の傑作『ソナチネ』[再タイミング版]といった松竹配給作品も含め、個性豊かな作品を上映します。
★サイレント映画には弁士や伴奏を付けて上映――サイレント映画4プログラムについては、公開当時と同様に弁士による説明やピアノ等の生演奏を付けて上映します。
作品リスト
(★印の回は弁士・伴奏付で、♪印の回は伴奏付で上映します。)
1.『路上の靈魂』 [弁士説明版](1921、村田實)
★2.『海浜の女王』 [松竹グラフ版](1927、牛原虚彦)、『晴れゆく空』(1927、赤穂春雄)、
『石川五右ヱ門の法事』[パテベビー短縮版](1930、斎藤寅次郎)
3.『民族の叫び』(1928、野村芳亭)、『島の娘』(1933、野村芳亭)
♪4.『恋の捕縄』(1925、清水宏)、『不壊の白珠』 [染色版](1929、清水宏)
♪5.『若者よなぜ泣くか』(1930、牛原虚彦)
6.『マダムと女房』(1931、五所平之助)
7.『婚約三羽烏』(1937、島津保次郎)
8.『愛染かつら』[新篇總輯篇](1938-39、野村浩将)
9.『和製喧嘩友達』 [パテベビー短縮版/デジタル復元版](1929、小津安二郎)、
『突貫小僧』[パテベビー短縮版](1929、小津安二郎)、『鏡獅子』[英語版](1936、小津安二郎)、
『父ありき』[ゴスフィルモフォンド版](1942、小津安二郎)
10.『陸軍』(1944、木下惠介)
11.『フクチヤン奇襲』(1942、政岡憲三)、『くもとちゅうりっぷ』[デジタル復元版]
(1943、政岡憲三)、『桃太郎 海の神兵』[デジタル修復版](1945、瀬尾光世)
12.『そよかぜ』(1945、佐々木康)、『はたちの青春』(1946、佐々木康)
13.『安城家の舞踏會』(1947、吉村公三郎)
14.『悲しき口笛』(1949、家城巳代治)
15.『てんやわんや』(1950、澁谷実)
16.『松竹映画三十年 思い出のアルバム』(1950、池田浩郎)、『女優と名探偵』(1950、川島雄三)
17.『カルメン故郷に帰る』(1951、木下惠介)
18.『波』(1952、中村登)
19.『新東京行進曲』(1953、川島雄三)
20.『君の名は』(1953、大庭秀雄)
21.『君の名は 第二部』(1953、大庭秀雄)
22.『君の名は 第三部』(1954、大庭秀雄)
23.『二等兵物語』(1955、福田晴一)
【サブセクション《松竹時代劇と下加茂・太秦撮影所》 No.24-34】
★24.「無声時代劇選集」
『一殺多生剱』 [マーヴェルグラフ短縮版](1929、伊藤大輔)
『切られ與三』[短縮版](1928、小石栄一)
『斬人斬馬剣』[パテベビー短縮版/デジタル復元版](1929、伊藤大輔)
25.『雪之丞変化』[総集篇](1935、衣笠貞之助)
26.『風雲金比羅山』(1950、大曾根辰夫)、『故 阪東妻三郎 関西映画人葬実況』(1953)
27.『獄門帳』(1955、大曽根辰保)
28.『流轉』(1956、大曽根辰保)
29.『歌う弥次喜多 黄金道中』(1957、大曾根辰保)
30.『侍ニッポン』(1957、大曽根辰保)
31.『武士道無残』(1960、森川英太朗)
32.『いも侍・蟹右ヱ門』(1964、松野宏軌)
33.『コレラの城』(1964、菊池靖・丹波哲郎)
34.『忍法破り 必殺』(1964、梅津明治郎)
35.『抱かれた花嫁』(1957、番匠義彰)
36.『黒い河』(1957、小林正樹)
37.『日本の夜と霧』(1960、大島渚)
38.『非情の男』(1961、高橋治)
39.『スパイ・ゾルゲ 真珠湾前夜』(1961、イヴ・シャンピ)
40.『秋刀魚の味』[デジタル復元版](1962、小津安二郎)
41.『男の嵐』(1963、中川信夫)
42.『嵐を呼ぶ十八人』(1963、吉田喜重)
43.『乾いた花』(1964、篠田正浩)
44.『新宿そだち』(1968、長谷和夫)
45.『いい湯だな 全員集合!!』(1969、渡邊祐介)
46.『男はつらいよ』(1969、山田洋次)
47.『虹をわたって』(1972、前田陽一)
48.『旅の重さ』(1972、斎藤耕一)
49.『女生きてます 盛り場渡り鳥』(1972、森崎東)
50.『砂の器』(1974、野村芳太郎)
51.『ブロウアップ ヒデキ BLOW UP! HIDEKI』(1975、田中康義)
52.『同胞』(1975、山田洋次)
53.『さらば夏の光よ』(1976、山根成之)
54.『俺たちの交響楽』(1979、朝間義隆)
55.『ざ・鬼太鼓座』(1981/94、加藤泰)
56.『必殺! THE HISSATSU』(1984、貞永方久)
57.『キネマの天地』(1986、山田洋次)、『ありがとう大船撮影所―新たな天地へ向けて―』(2000)
58.『異人たちとの夏』(1988、大林宣彦)
59.『釣りバカ日誌』(1988、栗山富夫)
60.『つぐみ』(1990、市川準)
61.『ソナチネ』[再タイミング版](1993、北野武)
62.『釣りバカ日誌スペシャル』(1994、森﨑東)
63.『珈琲時光』(2004、侯孝賢)
64.『花よりもなほ』(2006、是枝裕和)
イベント上映
弁士・伴奏付上映、伴奏付上映
・7月10日(金)19:00~ 『海浜の女王』他(計88分)弁士:片岡一郎 伴奏:上屋安由美
・7月11日(土)16:00~ 『不壊の白珠』他(計104分)伴奏:柳下美恵
・7月12日(日)14:30~ 『若者よなぜ泣くか』(193分)伴奏:神﨑えり
・8月22日(土)16:30~ 「無声時代劇選集」(計75分)弁士:澤登翠 伴奏:湯浅ジョウイチ、鈴木真紀子
*上映前に牧由尚氏による解説(約10分)があります。
解説・トーク
・8月11日(火)19:00~ 「無声時代劇選集」上映前、牧由尚氏による解説(約10分)
・9月 1日(火)19:00~ 『カルメン故郷に帰る』上映後、大関勝久氏(名古屋大学)によるトーク
企画概要
企画名:「松竹第一主義 松竹映画の100年」/Shochiku Cinema at 100
会期:2020年7月7日(火)-9月6日(日)*月曜休館
会場:国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU[2階]
主催:国立映画アーカイブ
企画協力:松竹株式会社
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
ホームページ:https://www.nfaj.go.jp/exhibition/shochiku202006/
定員:111名(各回入替制・全席指定席、★弁士・伴奏付上映のある日=105名)
料金:
新型コロナウイルス感染症予防のため、前売指定席券のみとし、当日券は扱いません。
(障害者及び国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズを除く)
〇前売指定席券
一般・シニア・学生の方は前売指定席券をご購入ください。
6月30日(火)10時より、チケットぴあにて全上映回の前売指定席券(全席指定席・通常90席/弁士・伴奏付上映のある日は85席)を販売します。[Pコード:551-117]
〈通常回〉
一般:520円/高校・大学生・シニア:310円/小・中学生:100円
〈弁士・伴奏付上映回〉
一般:1,050円/高校・大学生・シニア:840円/小・中学生:600円
*購入方法や発券手数料等の詳細はホームページかプログラムをご確認ください。
〇障害者・キャンパスメンバーズ等券
障害者(付添者は原則1名まで)ならびに国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズを対象に、各日の開館時より1階受付にて発券します。
〈通常回(21席)〉
障害者(付添者は原則1名)、キャンパスメンバーズ:無料
〈弁士・伴奏付上映回(20席)〉
障害者(付添者は原則1名):無料、キャンパスメンバーズ:教職員500円/学生400円
国立映画アーカイブについて
映画の保存・研究・公開を通して映画文化の振興をはかる、日本で唯一の国立映画専門機関。2018年4月に東京国立近代美術館フィルムセンターが改組し、6番目の国立美術館として誕生しました。
国立映画アーカイブWEBサイト:https://www.nfaj.go.jp/
National Film Archive of Japan Official website(in Englsih):https://www.nfaj.go.jp/english/
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