狂言師・野村萬斎監修、野村太一郎 主演・演出の新作能『白雪姫』が、無観客による動画配信と、BD、DVDでの販売が決定されました。
この『白雪姫』は、6月に公演を予定していたものの、新型コロナウイルス感染症の影響を受け見送りとなった作品。狂言の中に能が入り、誰もが知る白雪姫という童話をテーマに古典芸能の世界と現代風の映像配信で演出したものになります。
配信は2020年8月中旬からを予定し、鑑賞価格は980円(税込)。初回数量限定版ブルーレイは価格が1万1000円(税込・送料込)、通常版DVDは5000円(税込・送料込)で、どちらも10月以降の配送となります。クラウドファンディング「SILKHAT(シルクハット)」での取り扱いとなります。
あのグリム童話の傑作が、時空を超えて今、銀座シックスの観世能楽堂に甦る。1810年の初版本出版から数えて約200年。狂言師野村太一郎が、父万之丞の遺した新作能「白雪姫」の世界に、今を時めく仲間たちとともに新しい命を吹き込んでいく。グリムの原作では中世ドイツの暗い城、深い森、侏儒(しゅじゅ)のグロテスクな姿が、陰惨なラストを際立たせる。
リリース:イントロダクション より
万之丞版「白雪姫」では、ここに大胆な翻案が加えられ様式美が樹立された。今回の再演では更なる妙味が加えられている。リハーサルから本番直前のゲネプロまで、アイデアが出され検討されたのだから、その真剣さは誠に尊いものと言える。能狂言の世界ならではのユーモアと諧謔味が加わって、観客はそこかしこで上質な笑いに誘われ、我知らずグリムの幻想世界に引き込まれる。
ここには、野村萬斎さんという類稀な狂言師を監修者に迎えられた僥倖がある。ここに80分に喃々とする大曲「白雪姫」は、不朽の名作としての生命を勝ち得たのである。
●新作能「白雪姫」解説
新作能「白雪姫」の再演は、八世野村万蔵(五世野村万之丞)十七回忌追善特別公演として、2020年6月6日、銀座シックス地下3階にある観世能楽堂での上演が予定されていた。しかし、新型コロナ・ウイルスの影響で、結局、無観客上演のかたちをとらざるを得なかったのである。誠に残念なことではあったが、奇貨居くべし、この無観客上演という状況が、映像収録には大きなプラスに働くことになる。
カメラやマイクといった機材の配置に制約がなくなり、いわば「芸術収録至上主義」の好条件が現出した。観客に遠慮することなく好きなようにカメラが動き回り、最高の映像美を実現し得たのである。
静まり返った観世能楽堂の空間。舞台では生きの良い若手と中堅を中心に、比類ない演劇魂が舞っている。野村太一郎(30)演ずる「女王=魔女」役の雄弁。「白雪姫」を静的な魅力で演じ切る坂口貴信(44)。その白雪姫を救う異国の「王子」には観世流宗家のプリンス、観世三郎太(21)。原作にないアイデアが盛り込まれて、生き生きと「鏡の精」を演じた大槻裕一(22)。そして、この物語を動かすエンジンともいえる「太郎冠者」役に野村裕基(20)。7人の小人には達者な役者が配され、若手からベテランまで実にバランスの良い、まずは万全の布陣と言えよう。
● 新作能「白雪姫」あらすじ
昔々、とある国のとある城に「白雪姫」と呼ばれる美しい王女様がいた。王の死後、彼女の継母である王妃は、白雪姫を忌み嫌い、目の敵にしていた。また「美」への拘りが格別に強い王妃は「魔法の力」を持っていた。この力で家来の男を鏡に閉じ込め、真実しか言えないように呪いをかけた。彼女は鏡の精に「この国で一番美しいのは誰?」と聞き、「それは王妃様、あなたです」の答えに満足する日々だった。白雪姫が7歳の誕生日を迎えた日、いつもの問いに「それは、白雪姫」という答えが返されたことに激怒。臣下(太郎冠者)に白雪姫殺害を命じ、証拠として姫の「心臓と肝臓」を切り取って持参するよう言う。
太郎冠者は、白雪姫を不憫に思い、殺さずに小人の家に行くようにといって逃がし、猪を狩って、その肝臓を持ち帰る。森に残された白雪姫は7人の小人に会いに行き、かくまってもらうことになる。一方、白雪姫がまだ生きていることを知った王妃は、林檎売りの老女に成りすました王妃からもらった毒林檎を口にして息絶える。
7人の小人が嘆き悲しむなか、太郎冠者に連れられて隣国の「王子」が登場する。王子は魔女である王妃を打ち倒して、呪いを解き、白雪姫を生き返らせる。そして二人は喜びの「舞」を舞い、幸せに暮らしていくのであった。
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